たぬきのちらうら

適当に、好きなことを書く。おもにシャニマス

今年一番面白かった青春マンガ、イチゴーイチハチ!

「特別なことのない高校生活のなんと特別なことか。」


今年はだいたい300冊くらいマンガを読みました。
例年通りそんなに多くはありませんが、
面白いマンガの比率は高かったんじゃないかと思います。

各方面で話題の『BEASTERS』は間違いなく名作。

以前レビューを書いた『凪のお暇』なんかは、
時代にピッタリですべての社会人女子に読ませたい作品。

定番ですけど『Dr.STONE』とかずば抜けておもしれーです。

でも、一番は文句なしでコレ。
最新刊読んだときもだえ苦しみました。

相田裕先生の「1518! イチゴーイチハチ!」です。



ちなみに小学館の公式で一話が読めます。
以前はマンガワンでも読めましたのでまた来るかも。

作者の相田裕先生はアニメ化された「ガンスリンガーガール」も描いていて、
歴もそれなり。
とはいえ、前作とは方向性がまあまあ違います。

舞台となる松武高校は、公立のすべり止めとして受験されることの多い、
いうなれば1.5流の私立高校。
部活動も盛んでスポーツ推薦もあり…
と、皆さんの思い浮かべる通りの私立高校。
一つ特徴的なのは、学校のモットー。
「文・武・楽」の3つをモットーとし、
生徒が楽しむことを重視していると、
1話で生徒会長が演説します。

うん、わかる。
本当にどこにでもある私立高校って感じだし、
学校のモットーなんてキレイゴトで有名無実。
あってもそれほど意識しないってのが現実。
ここまで、本当に「普通の私立高校」って感じ。

登場人物の紹介とかはここで語らずとも、
上で張ったリンクから1話読んでください。

そんな学校で「生徒会」を舞台にした、
とがった要素もなければ部活動で全国だって目指さない。
「青春マンガ」です。


「特別なことのない高校生活のなんと特別なことか。」


繰り返しになりますが、この作品の魅力を一言で表すとこれに尽きます。

特にこの「生徒会」というチョイスが絶妙。

皆さんの生徒会のイメージってなんでしょう。
マジメな子が内申のためにやる?
偉そうにしたい子がやる?
学園バトル物の強いキャラの定番?
いろいろあるでしょう。

ここの生徒会は、松武のモットーを体現するための場所。
やってることも普通の生徒会。
地味な事務仕事やらイベントの企画運営仕切りなどなど。
裏方から生徒が楽しむ場を作る人たちです。
そこで働く生徒会メンバー6名。
の表情、周囲の人との会話、動き。
そして生徒会活動を通して少しずつ変わっていく内面。
そのあたりの描き方が本当に秀逸です。
松武だから、高校生だから過ごせる最高の時間です。


技法的に何が素晴らしいかといえば、
物語構成力、これにつきます。

マンガって本当によくある手法として、
マッチポンプ的なストーリー展開なものが多いんです。
スポーツならケガをしてピンチを作る。
恋愛ならライバルキャラ登場させて恋しかけてゆらゆら。
甲子園出場目前に交通事故にあったり、
あまつさえ死んでしまってボクシングやってたやつがピッチャーになったり。
バトルモノなら倒せるところで手加減した相手を覚醒させたり。

盛り上がりのためにピンチを作るって、
簡単ですけどはっきりいって物語構成力としては下の下。
「タッチ」レベルなら最初から決まっていた展開でしょうけど、
エースは絶対ケガするし、家族はたいてい病気になる。
そんでもって感情を揺さぶることで人間を描く。
事件が起きれば人間関係も感情も動くけど、
それにばっかり頼るのは力量不足と言っているようなもの。
最近なんて10巻近くかけて順調にスタートしたバンドのメンバーが
交通事故で楽器できなくなって、
主人公だけ海外にわたって作品再スタートとかいう、
なんだこれふざけんなボケー!
って叫びたくなるようなマッチポンプ展開な作品もありました。
物語進めるために事故や病気を起こすってホントにもう、はっきり言って嫌いです。
件の音楽マンガはそれでも面白いので悔しいですが。

と、感情的になりすぎました。

イチゴーイチハチ!にはこれがない。
主人公の一人である烏谷は中学時代の1年から野球部のエースで、
肘をやって投げられなくなったという設定はありますけど、
すでに壊してますからね。

今まで野球がすべてだった彼が、
野球以外のものに触れていき変わっていく。
その姿を描くっていうのは最初から決まっているのですから。
当然ですけど、今のところおっきな事件で物語動かすとかなし。

最初に決めた設定の下、
生徒会という言ってしまえば地味な舞台で、
登場人物の心の変化を描くだけで、
青春をまぶしいほどに描き切っています。

その彼と一緒に生徒会に入ったのが、
これまた普通の女の子でありもう一人の主人公、丸ちゃん。
この子、いい子であること以外本当に普通です。
烏谷と丸ちゃんが生徒会という場、生徒会役員たちとかかわり、
それぞれが少しずつ変わっていく。
この二人もまた影響しあうし、
生徒会の先輩たちも二人を見て少しずつ変わる。

人は、人と関わって変わるもの。
良い方向であれ悪い方向であれ、
人とかかわる限り影響しあっていく。
その変化が尊いのです。


読んだ後、自分の高校生活に思いをはせたものです。
ぼっち飯してたし、部活にそれほど馴染めていたわけでもないし、
友達と遊ぶことも少なかった。
それでも、特別に感じる楽しい時間は過ごせていた。
そんなこと思い出して胸がキュッてなります。


中身について多くは語りません。
読んで、感じて、身もだえてください。
一つだけ言うと、リレーの話が最高でした。