たぬきのちらうら

適当に、好きなことを書く。おもにシャニマス

キツイし大変だし、稼げる人もいるけどブラックもいいとこのタクシー業界の闇。


こんな記事が出てたんで憤りを込めて、
タクシー業界の実態を書こうと思います。

キツい?大変?違うんです!実は儲かるタクシードライバーという商売ーーーガジェット通信


上の記事に書いてあることは9割方真実だろう。
でもこれは、
「今からあなたがタクシー会社に転職して得られる生活」
では決してない。
ごく一部、タクシードライバーという仕事で、
上のような生活を手に入れている人はいるが、
普通は無理。

所属する会社によって天地の差だし、
タクシードライバーとしてのスキル、対人スキルなどなど、
スペックが高い人だけが得られる成功例です。

というか、出だしからウソ記事だってわかるんですけどね。

“現役運転手のYさん(乗務歴1年/48歳)”

“それはこのタクシードライバーの仕事をうまくやれば非常に安定した高収入を得られ、そこから不動産投資物件購入資金に回せるからだという。それを証拠に彼は、もう私鉄駅近くのアパートをすでに購入しているそうだ。自分の家を15年前に建て、不動産物件まで購入するというかなりのやり手である。”


年収500万円だそうなので、
タクシー会社で稼いだお金で投資物件を買ったのではありません。
それまでの貯蓄を使っただけ。
いや、うん、嘘は書いていないけれども。
あたかもタクシーで稼いで投資物件まで買えるように書くのは、
ダメだと思うんですよね。


でも、最近こういう記事多いんです。
先日マンガワンというアプリでも似たような広告が出てきました。

闇金ウシジマくんで闇の深いタクシードライバーの話を書いてるのに、
同じアプリ内でタクシーの求人広告が出るの、笑うしかありません。

何故こういう記事がたくさん出るのか。
答えは簡単、タクシー業界や会社がお金払って書いてもらってるからでしょう。
それくらい人不足なんです。

第一交通なんかはテレビCMをうってまで求人していますし、
MKタクシーは一時期、タクシーの後ろの窓に
「ドライバー平均年収500万円以上!積極採用中!」(詳細な文はうろ覚え)
という求人バナーを乗せてました。
いや、乗りたくないでしょ、年収後ろに書いてあるタクシーなんて。

でも、これ誇張じゃなくて実際にあった広告です。


じゃ、実は稼げるの実態を紐解いていきましょう。




1.月14日間勤務

これは嘘ですね。
記事内にも書いているとおり、これは18時間拘束3時間休憩の働き方。


例えば生活サイクルとしては、2日分48時間で考えるといいかもしれません。
8時起床、10時出勤・勤務開始
そこから休憩3時間を挟みつつ翌4時終業。
もうこの時点でクタクタだと思いますが、一応法律上問題ない勤務の仕方です。
で、日をまたぐ勤務の場合明け休みという法律上のルールがあり、
4時に終業なら、その日はもう働いてはいけません。
つまり、1勤務に2日つかうので、
月の最大が14日勤務となるのです。

14日しか働かないと書いてますけど、正確には月に14回、28日の勤務。
31日のうち28日拘束されているので、実質の休日は3日しかありません。
法律上、月4日、1週間に1回の休みが義務付けられているのですが、
このあたり大丈夫なんでしょうかね。

「いやいや、明け休みあるからそこ有効活用すればいいじゃん」
と言う意見もあるでしょうが、これだけ働いたら帰ってどこか遊びに行くなんて、
かなり体力がないとできません。
帰って寝て、昼過ぎに起きて、夜は翌日の勤務のために寝ますから、
実質すごく短いんですよ、自由時間。

さて、元記事にあるように旅行やゴルフに使う時間なんて、
どこから捻出するんでしょうね。

もちろん、これは記事に書いてる働き方の実態なだけ。
普通に昼勤か夜勤のみの実働8時間(だいたい拘束時間は10時間超えるけど)
とか、通常の21日前後の勤務の求人もあります。


あとは、企業によりますが、実働時間のカウント。
流し運転(お客様を乗せない回送)は勤務時間じゃない。
なんて暴論言うところもあります。
基本給に固定残業代が含まれていて、何時間でも残業させられる場合も。

あとひどいところだと、洗車は自分でやる企業。
運転している時間が勤務時間だから、洗車は業務時間外。
と言われ、結構いろいろと時間を取られます。
車の維持費を自分の給料から天引きされていて、
裁判沙汰になった企業もありましたね。

ほとんどのタクシー会社で気を付けることは、
勤務時間以上に拘束時間が長いこと。
これだけ人生の時間を拘束されるから、
月収40万円に届く可能性がある仕事だということは覚えていてください。



2.本当に月収40万円?

これは本当。稼げるのは稼げます。
理由は、上の通り働く時間が長いから。
そして、乗車料金分のインセンティブがつくからです。
といっても実は、タクシー会社は
月給のうち基本給が少ないところが多いので、
その仕組みはちゃんと理解する必要があります。

例えば、月収40万円だとしても、
基本給15万円(大阪の最低賃金ライン)+固定残業代60時間分86000円(これも最低賃金)
の月給23万6000円。これに+インセンティブ14万4000円+一律交通費2万円。

こんなところでしょう、私の想像ですが。
もともと、60時間分(時間は例です)の残業代が含まれており、
どれだけ残業しても残業代は出ません。
交通費もコミコミだったりするのは珍しくありません。
残業時間が60時間を超えたとしても、先ほどの
「流しの時間は実働時間に含まない」
とかいろいろ理由を付けて超過分の残業代は出ません、ほとんどの場合。
で、インセンティブの割合が高いですから、
病気で休んだり有給を取れば稼ぎは当然減ります。
お客様を拾えなくても稼ぎは減ります。

このインセンティブも記事内の乗車料金の6割というのは、
完全歩合制の働き方の場合なのでご注意。
その場合基本給すらありませんから、
強引にでも客を乗せないと、生活すらできません。
通常のインセンティブの割合はもっと低いので(すみません、ここの相場は知りません)
もう常にお客様を乗せるくらいの営業努力は必要です。

タクシー会社も大手で都会だと、完全予約制のドライバーなどがあり、
お客様に困ることは少なかったりするので、
その場合大変だけど高い月収は割と約束されます。

ただ、この働き方とこの給与であなたの人生を充実させられるか。
そこは、しっかり考えて仕事を選んでください。


3.その他闇の深い話

他の注意点としてもいくつか。
入社祝い金はすぐにはもらえません。
6か月勤務後とかそんなもんです、当然ですけど。
酷いところでは、入社祝い金として、お金を貸し付けてくるところ。
いわば、会社に借金をさせる形。
体よく就職奨励金とか言ってるところもあったりします。(新聞奨学生とかこれですね)
お金を借りているから辞められないという状況をつくって、
無理やりにでも働かせます。

勤務時間は先ほど書いた通り。
死ぬほど拘束時間が長いケースが多いのでご注意を。

あとは、タクシー会社や社内の人間関係でのナワバリ争い。
「〇〇駅前はB先輩の島だから、先輩の車より前に並んで客待ちしてはいけない」
みたいなことは少なくありません。
なにせ、学歴・年齢不問で採用する業界ですから、
野蛮な人も多いですよ。

あとは、不祥事も最近多いですね。
高級なイメージで売っている某タクシー会社は、
今年頭に社長が酔った勢いで別の会社のタクシーに乗った際、
ドライバーに暴力をふるい現行犯逮捕。
同じ企業で春ごろに泥酔した乗客の女性をラブホテルに連れ込んだ事件もありました。

言い方が悪いですが、社会的に底辺層の方々が働いている職種でもあるので、
こういった事件は尽きません。


4.最後に、タクシードライバーのいいところを

散々書きましたけど、稼げることは概ね事実です。
車両維持費とか残業時間の操作とかは違法なので、そんな会社だった場合は早くやめるか労基に言ってください。
法令遵守がまだ比較的できているところなら、頑張った分だけは稼げます。

また、業界的には右肩上がり。
インバウンドで増えた外国人観光客のニーズが年々増加。
介護タクシー等のニーズも高まり、
タクシー業界自体は非常に成長産業です。
その分金回りがよくなるかもしれませんし、
観光ドライバーとして語学や接客スキルを磨く機会がある会社も多いです。
かっこいいタクシードライバーのイメージそのまま、
品のある人間へと成長できる環境が整っている会社もちゃんとあります。

また、タクシードライバーはいろいろな人に会える仕事。
社長や重役などを乗せることもあれば、
産気づいた主婦を乗せて病院へ行くなんてドラマチックなこともある。
「前の車を追ってくれ!」
なんて言われることも、ないとは言い切れません。
乗客の数だけ人生があり、お客様と話すことでいろいろなことが知れる。
これは、なかなかに楽しい仕事です。
もちろん、理不尽な客もたくさんいるでしょうけど、
誰かのためになる仕事であることは間違いない。
誇りと、楽しむ気持ちを持って働ける、おしゃべりが好きな方には、
向いている仕事といえると思います。
早期退職をして、時短で稼いだりするのにも向いている仕事です。
人生経験豊富な早期退職者の方々は、
自分の人生経験をお客様に面白おかしく話して楽しませる
エンターテイナードライバーになったりもできます。




僕は求人にかかわる仕事をしているうえで、
求職者に幸せになってもらうことを一番に、広告を作っています。
クライアントがブラックなら、そこは隠さずに、
それでも給与や地位など得られるものをしっかりアピールする。
真実をちゃんと伝えて、そのうえで選ばせる。
それは、僕らの義務であり矜持です。

無責任な記事を書いて、人の人生を狂わせない。
その信条に反する記事を見てしまったから、
こうやって、だらだら書きました。

タクシードライバーをやってみようかと思っている方。
よく考えて、転職活動に臨んでくださいね。